「水が語る声なき声を聴くこと、木が育つ音なき音を聴くこと」(園便りNO.11)

on 12月 1日, 2016

 運動会が終わってからの生活は、見学者などの外部からのお客さんを迎えたり、発表ごっこを楽しんだり、秋の味を味わったりと、楽しく忙しい生活の中で、心をもっと自由に表現し、様々な自分を知るという経験を重ねて行きました。自分の中にある「強い自分と弱い自分」「明るい自分と暗い自分」「素敵な自分と意地悪(ずるい)な自分」、そのような心も持ち合わせていることに気づきながら、もう一歩深く、自分の心には、「友だちや、小さい子に優しくしてあげる『愛』がある」ということにも気づいていくのでした。
 まり子先生は、「つぼみ組の子どもたちは、愛されるという経験を、春からたっぷりと味わうことができた。「愛」には「やさしさ」という表し方があることを知っていくことができた。「ありがとう(感謝)のあった出来事」を❤形の色紙を容れ物に集め、目で分かるようにし、「私たちは、『ありがとうのある世界』に生きているのだ」ということを感じさせていきました」と語っています。彩花先生は、『視覚支援学校に招かれた時、「使っても使ってもなくならない『自分の愛』を使ってみる」という思いで、参加させていただいた。実際には、表現できず、見ているだけの子もいたが、その後の生活の中で、弱い子への関わりを通して、愛を分け合う表現が経験できていった」と語っています。
 さて、発表会に至るまで、またその当日までも、様々な物語がありました。ここで一つ一つを語ることはできませんが、発表したことは、平素の友だちとの関わり、遊び、相談ごとなど、日常そのままです。そのことに、大人が笑い、ほほ笑み、見守り、応援し、子どもの成長に涙したことでした。特に、大きい子が小さい子を支え、子ども同士の愛を感じた瞬間に、温かな気持ちになったことでしょう。子どもは、「自分の物語」を自分の力で書き始めました。子どもなりの悩み、苦しみ、悲しみ、憧れ、希望を発信しようとする、ノリに乗っている「新人作家」です。そして私たち大人も、我が人生を、子どもと同じ時代を伴走している一人の「先輩作家」です。そんな先輩作家が、子どもの発表を見て、不覚にも心揺さぶられたのは、新人作家の魂がまぶしく映ったからではないでしょうか。もっとも成熟した魂が、最も幼い未熟な魂に揺さぶられ、魅了されたのです。しかし、それは、私たち大人が子どもの魂を知ろうと、見ようと、分かろうとしたからに他なりません。子どもの魂に触れられることは、大きな喜びです。
 たくさんの感想をありがとうございました。感想を読ませていただき、こひつじ幼稚園が何を大事にし、どのような教育をしようとしているかをご理解いただけてることが分かり、私たち教師は本当に励まされました。教育は「水が語る声なき声を聴くこと、木が育つ音なき音を聴くこと」であると、私の恩師は言いました。先輩作家のお母さんたちが、我が子にとどまらず、こひつじの子どもたちの声なき声を受けとめ、その思いを分かろうとして下さったのだ、と感じました。
 私は、大人になってから、多くの児童文学や童話を読みました。中でも、『ムーミン』と『赤毛のアン』は別格です。『ムーミン』は、フィンランドの大地(スウェーデン系フィンランド人の精神風土)、北欧の民衆の革命から生まれたものです。この童話作家はトーべ・ヤンソンと言います。『ムーミン谷への旅』の一部をご紹介します。

『こうして、霧深い明けがた、みんなは庭にせいぞろいをしました。
東の空は、日の出を待って晴れてきました。
太陽はいま、あがろうとするところです。
数分のうちには、夜はおわり、なにもかもが、またはじめからはじまるのです。
あたらしい門のとびらがひらかれます。
不可能を可能にすることもできます。
あたらしい日がはじまるのです。
そして、もし人がそれに反対するのでなければ、どんなことでもおこりうるのです。』

 ヤンソンは、深い闇からほのかな光が兆し始める夜明けに、仲間を見つめ、未来を見つめながら、新しい時代の兆しに、音なき音に耳を澄ませる瞬間を、魂を込めて表現していると思うのです。私は、子どもの世界も、これとそんなに変わらない世界だと考えます。大人が邪魔しない限り、子どもは新しい世界を自ら切り拓いていきます。
子どもたちの生活は、「クリスマス」へと移っていきます。幾度も挑戦し、幾度も失敗してもいい「自分の物語」を自分で書ける喜びと共に、「クリスマスの意味」を知り、命と愛を与えられていることに感謝する心を育てていきたい、と願います。

12月 行事予定

2日 ゆり組 視覚支援学校交流
5日 誕生会
7日 アドベント3
9日 わくわく 懇談会
14日 クリスマス会
15日 わくわく終業日
16日 終業式
21日~22日 お泊り会