「学び行く心の育ち時期」 (園便りNO.4)

学校で、「雪が溶けたら何になる?」という質問に、小学生が「春になる!」と答え、不正解となったという話は有名です。その時の先生の顔が、心が、見えるようです。

私も、小学生の時に同じような経験をしました。近所のおばあちゃんが、「眠い眠い、春は眠いよ」と言いました。「どうして?」と聞くと、「ずっと寒い冬を過ごしてきたから、春の温かさに、心も身体もほっとするからだよ」という返事に、妙に納得したのでした。特に「心も身体もほっとする」と言うフレーズに憧れさえ感じたほどでした。国語の時間、フキノトウが雪の中から、春を待っているというくだりがありました。「さかえさんは、どう思うの?」と聞かれ、「眠くなる」と答えてしまったのです。正解は「雪解け水が、フキノトウを潤す」というような内容でした。先生は、私の真ん前に立ちはだかり、真っ赤な顔をし、腕を振るわせていました。小さい声で「ごめんなさい」と言ったけれど、耳には入らないようでした。

算数の「余り」の授業時間、「43個の饅頭を二つに分けてみよう」と、先生が言いました。21個に分けた余りの始末が問題なのだとすぐに分かりました。私は、「余り1個の饅頭は、友だちと仲良く半分こにするか、一人でそっと食べるか、自分が我慢して友だちにあげる。迷うところだ」と答えました。先生は、私の真ん前に立ちはだかり、真っ赤な顔をし、腕を振るわせていました。そして「真面目に考えなさい」と怒った口調で言いました。心の中で「大好きなお饅頭のことだから、大真面目なのに、お饅頭を1個余して終わるなんて残念だ」と、思ったことを覚えています。答えは「21と21余り1」でした。その後日、小学校で母と会いました。先生とお話をしたのだと、後でわかりました。

こひつじ幼稚園でも、こんなことがありました。年長組になって、希望にあふれた一日目に「なぞなぞ」をしました。「『♪ソラ』の上は、なーんだ」と。たちまち手が上がりました。「雲」「太陽」「宇宙」「星」「風」などの答えが返ってきました。正解欄には、「♪シド」と書いてありました。私は「♪シド」の正解よりずっと素敵な子どもたちの答えに感動しました。答えは一つではない、むしろ、一つでない方が素敵だとさえ思ったのです。

幼稚園では、4月から、新しい『教育要領』が実施されました。幼・小・中・高・大学までを一本化する教育を目指しているようです。しかし、人間形成の一番大事な時期である幼児期を「学習の時期」とする国は、世界中どこにもありません。とても大切な「学び行く心の育つ時期」であって、この時期を丁寧に過させなければならないのです。私の時代は、上記に挙げたように、できる子は良い発達で、できない子は悪い発達であるという考えの時代でした。私は悪い発達の子とされました。でも、今は、個々を重視し、関心のあることに心が動き、何かを考えている最中を「発達」と捉えています。ですから、発達は、結果ではなく「プロセス」なのであって、一人一人、発達や考え方が違うのだと、世界中の学者が説いているのです。『教育要領』には以下のように、5歳の終わりまでに育ってほしい「10の姿」が示されています。

①健康な心と体 ②自立心 ③共同性 ④道徳性・規範意識の芽生え ⑤社会生活との関わり ⑥思考力の芽生え ⑦自然との関わり・生命尊重 ⑧数量や図形、標識や文字への関心・感覚 ⑨言葉による伝え合い ⑩豊かな感性と表現

こひつじ幼稚園で、子どもたちの遊びを通しての学びを見ていて、私には10の姿どころではありえないと思います。そんな乏しいものではありません。子どもたちが、大人の求める答えのために遊ばせられるのではなく、めちゃくちゃ無邪気さを発揮し、全てを自分事として遊び込む姿に、もっと多くの学びがあることを、私は確信しています。イタリアの学者が、100の姿と言いました。そのような学者もいるのかと、ほっとします。一つのなぞなぞに、たくさんの答えを想像できる子どもたちのように、一人の子が、こひつじ幼稚園の生活を通して、たくさんの学びを獲得できる遊びをさせたいものと、今日も、放課後の「教師の打合せ」は盛り上がっています。

6月行事予定

7日 なにぬねのの日
14日 なにぬねのの日
15日 花の日・子どもの日礼拝
19日 なにぬねのの日
21日 春の遠足
22日 避難訓練
25,26日 視覚支援学校交流
27日 内科検診
28日 誕生会
30日 身体測定