本当に「豊かな学び」を(園便りNO.12)

私が小学校生になった時、兄はこう言いました。「俺に近づくな。会っても知らんぷりしてくれ」と。二つ年上の真面目な兄は、2年間平和な小学校生活を送っていたのかもしれません。いよいよ私が小学生になるということは、自分の畑が荒らされると思ったのかもしれません。ですから、一緒に登校した記憶がありません。今となっては、兄が私を知らんぷりしたのだろうと思うのです。私は、それほど学校でいろいろなことをやらかしました。小学校4年生で転校した時、ホッとした先生がどのくらいいたことでしょう。その証拠に、転校先の学校の校長先生が自ら出迎えて下さり、やたらと「君はいい子なんだよ」と繰り返し言うのです。まだ何もしていないのに・・・。すぐに、運動会がありました。三度笠を踊るというのです。笠にお花紙で作った花を5つ付けます。お花は、誰よりもたくさん作って、みんなに分けてあげましたが、三度笠を踊るのは嫌でした。私は笠を一回転ではなく三回転させたら素敵になると提案しましたが、先生は「決まっていることだ」と、嫌な顔をしました。何故、運動会に三度笠なのかと質問しましたら、「いいから踊りなさい」と言われてしまいました。学習発表会は、『八郎潟』という民話の劇をしました。私は、村人Aの役でした。青森の十和田湖や男鹿半島が舞台のお話で、永住の地を求め、何故か湖で戦って目に矢が刺さる大けがをし、十和田湖へ逃げ帰って主となるお話し。当然乗り気でない私。モンペをはいてほっかぶりをして登場しなければなりません。そこで提案、「先生、村人は、実は十和田湖の妖精だったというのはどうですか?」。先生は「言う通りにしなさい」と言いました。そして呆れた顔で、「八郎太郎よ、どうしたんだい?」という私のセリフを、「栄よ、どうしたんだい?」と、ニヤリとして言いました。ちょっと胸が痛くなりました。発表会の前の日、いろいろ考えました。もし妖精が出てきたら、最高に面白いお話ができるのにと想像しました。その時、閃いたのです。私の父は、秋田出身です。秋田と青森の言葉は似てるはずだと。父に、秋田弁ではどうなるのか聞きました。「ハツロウタンロッサ~、ナスタッテバダ~」と教えてくれました。本番で、村人妖精Aになった気持ちで、やさしくこの言葉を唱えました。そしてすぐにいなくなるはずでしたが、「ハツロウタンロッサ~」の周りをゆらゆらしてみました。先生に「さかえ!」と叱られました。直後、兄に会いましたが、兄は知らんぷりしていました。   つまらない思い出を書いてしまいました。

こひつじ幼稚園の発表会は、多くの保護者の方々が感じてくださったように、子どもたちのアイディアや努力がたくさん詰まっています。個々に理想の自分を目標に据える子も沢山います。やらされているのではない、自分がやりたくてやっている子たちの瞳が、顔つきが、オーラがキラキラなのは、そのような事だからでしょう。『マッスル』の子たちは、自分の身体に、筋肉に関心が深まり、その後の積み木の片付けでは自信満々で、筋肉を働かせてくれます。支え合うことがうまくいくことだと分かりました。『仲良し楽団』の子たちは、その後のLiveごっこ、ゴスペルごっこで、音楽の楽しさを全身で証明していてくれてます。『よさこい』の子たちは、ただ踊るのではなく、見せ方(構成)を相談し、「真剣さ」が「かっこいい」ことを学びました。『灯り』の子たちは、秋の葉の美しさと共に、拾いに行く度にだんだんきれいな葉っぱが無くなっていく、つまり秋が終わっていくということを感じました。そして、停電になったら、「これを使うといい」と考えました。『帽子』の子たちは、自分の考えたデザインに向かい根気よく仕上げていきました。教師が寄り添うことで、もっと素敵にしたいとアイディアを膨らませ、実現していきました。根気が「実現することができる源」だと感じたはずです。『手品』は、人を楽しくだます面白さを、繰り返し味わいました。手さばきと同時に、言葉で説明を加えるのですから、難しいです。「おー!どして~!」と言われる快感を味わいました。

子どもたちが、お互いの頑張りを見せ合いながら心を揺らし合う生活には、本当に「豊かな学び」があります。お母さんから頂いた発表会の感想に、「このような経験は、人生において必要な学びだと思った」と書いてくださった方がいました。私たち教師は、このような生活を本当に大事にしたいと考えています。

しかし、私の子どもの頃の教育と、現在巷にあふれている教育は、残念ながらそんなに大きく変わっていないように思います。子どもの学びへの勢いを萎えさせてしまっていることの、なんて多いことでしょう。その原因は、指導の道筋を一本しかもっていない、他を認められない教師の懐の狭さにあります。発問して、子どもに発言させても、都合のよいものだけを採り上げ、それ以外は切り捨ててしまう教師、自分が期待する考えでなければ、頭から間違いであることを分からせようとする教師、子どもに考えさせることもなく、一方的に命令する教師。こういう教師ほど、饒舌なのに言葉に内容がないのです (自分の発表会の悔しさを思い出し、ちょっと書きすぎました)。本園の教師たちは、そういう教師ではありたくないと、常に願っています。

先日のフリーマーケットも最高に楽しい時間でした。「幸せって、こういうことだよね」「最高の一日だったね」と言って帰っていった子どもたちがいました。私たち教師は、フリーマーケットにも、発表会の子どもたちのようなキラキラオーラを見つけていました。お店屋さんの皆さんの素敵なこと!計画から、準備から、人集めから、こんな大変なことを「楽しい」「楽しかった」と言ってくださる皆さんが、発表会の子どもたちのように、自主的に、主体的に、喜んで参加してくださったからだ、と感じました。お客さんでいらしてくださった方々も、口々に「素晴らしい!」と言ってくださっていました。 OGの方までもお手伝いに来てくださり、キラキラしていました。視覚支援学校からも、早速感謝のお礼が届いています。

寒い冬の到来です。でも、みんなキラキラで過ごしましょうね。

 

12月の予定

5日 年長組 視覚支援学校交流

6日 誕生会

7日 アドベント第3週

14日 クリスマス会

17日 音楽隊LIVE

わくわく懇談会

18日 2学期終業式

20日 冬のお泊り会