☆ゆり組便り☆

 1学期も残りわずかとなってきました。春にしたいことの一つであった桜餅作りを先日終え、春にやりたかったことをすべてやりきり、いよいよ、夏へと突入しました。夏にやりたいことの一つは、火起こしをしてウインナーを焼き、そして、その後にマシュマロを焼いて食べること。昨年のゆり組の事を思い出しながら、どんな風に火起こしをしていたか、必要な道具は何か、どんなものが燃えるのかなどを話し合い、カレンダーを見ながら、ウインナーとマシュマロの日にちを計画しました。
予定していた日は、霧雨が降る朝だったため、火は水に弱いから違う日にしようということになり、翌日の計画に切り替えました。そして、いよいよ当日。「みんなの力を合わせるぞ!」と、ブロックを運ぶ人、燃える木を拾いに行く人、大きなバーベキューコンロを運ぶ人などそれぞれが自分にできることを考えながら、火起こし準備が始まりました。そして、炭は、何でできているのか、どうして炭に火をつけるのかを、栄先生に教えてもらい、火起こしが始まりました。マッチは、Rちゃんが挑戦してくれました。マッチに火をつける瞬間、みんな、息を止めて、集中しました。着火したとたん、「やった~!」「よし!次は、うちわだ!」と、これまでの経験が光りました。「近くは熱いから、少し離れてあおごう。」「目が痛くなってきたよ。お部屋から、めがねもってくる!」「こっち側だと、煙がこなくていいよ!」「黒い炭が、赤くなってる。」「筋肉を使うときだ~!!」etc…。火の熱さを感じ、汗だくになりながら、あおぎ続け、炭に火がつき、ウインナーを焼くことに成功しました。
いつものように、小さい子たちから、ウインナーを食べ、その間ゆりの子たちは、小さい子たちがみんな食べられているのかを気にしたり、自分たちの分は大丈夫かと、ちょっぴり心配してみたり、やっと食べることができたのでした。そして、ウインナーの後のお楽しみのマシュマロ焼きも食べきり、大満足の達成感いっぱいの時を過ごしました。
が、その数時間後に、ゆり事件が起きたのでした。

 その日は、全園児が楽しみにしている、「なにぬねのの日」でした。私たちのために、何日も前から、読む絵本を決め、準備をし、そして、お忙しい中、時間を作ってくださっているお母さんたちに、読みきかせが終わった後、『感謝の気持ちを込めて』、ゆりのみんなで歌を歌いました。その日も、お礼の歌を、ゆりのみんなで歌うこととなりました。とてもステキな時間に、ありがとうの気持ちを伝えようと歌っていたのですが、途中で、ふざける心が出てきてしまい、歌声の中に、ふざけている笑い声が混ざってしまったのです。 
会が終わった後、栄先生からのお話がありました。「今は、何のために歌っていたのか。本当に思いは込められていたのか。読んでくれたお母さんたちの気持ちを、本当に考えていたのか。今の歌で、ゆり組のみんなは、たいしたことはない、と思われてしまうことだった。幼稚園の中でのキャプテンのはずなのに、ゆり組として、それでよかったのか。ゆり組、失格だ。」と。
子どもたちは、真剣な表情で話を聞きながら、自分の心と向き合いました。
 今日は、力を合わせてウインナーを焼いたいい日だったはずなのに、残念な日になってしまった。ゆり組失格の日。キャプテンでもいられない。このままでいいのだろうか。ゆり組として、どうしたらいいか、よく考えて、明日、みんなで話し合うこうとにしよう。ということになり、カレンダーには、『ゆり組失格の日』と書き、一日が終わりました。

 学級では、やりたい遊びが計画的になされ、それぞれのチームとして、「仲間」や「連帯感」を味わいながら動き出していました。3人のことが、ゆり組チーム全体の失敗と考える、よいチャンスでした。

 そして、次の日の朝。登園してすぐに、話し合いをしました。

昨日は、どういうことだったのだろうか?
「お母さんたちのことを、ちゃんと考えていなかったんだと思う。」「愛がなかった。」「自分のことしか考えていなかったと思う。」「心のロウソクの火が消えていた。」「まっくらだ。」「とげとげだ。」「優しい心が使えていなかったんだと思う。」「ますます知恵が加わり、背丈も伸びてるのに、ゆりの心じゃなかった。」「間違った使い方をしてしまった。」 と、いろいろな発言がありました。これまで、礼拝を通し、自分の心と向き合いながら、聖句をかみしめてきたことばが、あふれでてきました。

間違った使い方をしてしまいそうになる時、火が消えてしまいそうになる時は、どうしたらいいのだろうか?
「よく考えることが大切だと思う。」「愛を使ったらいいんだと思う」
 
知恵や愛をどう使うかを決めるのは?
「自分!」「お母さんや先生じゃないよね。」 

今のままでは、ゆり組は失格で、キャプテンはたんぽぽさんになるけれど、いいの?
「ダメだ!」「キャプテンは、みんなのことを考えて、愛の心を使える人じゃないと。」  

ゆりとして、どうしたらいいのだろうか?
「よくよく考えて、力の使い方を考える。」「心のロウソクに火を、もう一度火をつけよう。」「本当のゆりの心になる!」「新しい心にしたらいいと思う」「愛を使ったらいい」 

みんなの中に、よく考える知識や愛はあるのかい?
「ある!!」 ひとりひとり、確認し合い、その力をどう使ったらよいのかをよく考えながら過ごそう、新しい本当のゆりの仲間になろう!と話し合いが終わり、改めて、『心のロウソクに火がついた日』とカレンダーに書き、一日が始まりました。

 女の子のアイドルたちは、衣装作りや、アイドルのチーム名を決めようと、アイドル手帳(衣装のデザインや決まったことを書いておく、アイドル仲間の手帳)をもって、「アイドルの名前考えてきた?」「私は、○○がいいと思うんだけど。どう?」と話し合いが始まりました。
 外からは、「相談しよう~!!」「集まるぞ~!」と宇宙船秘密基地の方から声が聞こえてきました。しかし、「先生~、相談始めようと思うんだけど、なかなか集まらないんだよ。」と。しばらくして、様子を見に行くと、「みんな、いっぺんに自分のことだけ言うんだよ。」「集まったのに、違うことしないで!」とバラバラに。この日は、宇宙船の中にゆり組みんなが入れるのかを確かめる以外は進むことができず、帰る時間になってしまったのでした。「もう、嫌になってくるよ。旅の日が近いのに!!」

帰りの集まりの時間に、その気持ちを伝えようと、その日、2度目の、ゆりの話し合いが、始まりました。
 「宇宙船のみんなに、言いたいことがあります。もうね、僕はね、嫌になってしまったよ。集まろう!って、言っても集まらないし、自分のことばっかり言って、何もできないまま、帰る時間になってしまったよ。宇宙に本当に行かないの?できないよ!やる気あるのかい?ないなら、アイドルの女の子たちに、仲間になってもらって作った方がいいとも思ってるよ。どうなの?」と、キャプテンの強い訴えでした。
再び、沈黙となり、気まずい空気が流れ、真剣な表情で考えはじめる子どもたち。
すると、アイドルの女の子たちが、「私たちも、初めはそうだったよ。バラバラだった。」「何回も、どうしたらいいか話し合ったらいいよ」と、自分たちの経験を元に、アドバイスしてくれました。
 何度も崩壊し、つまづいたアイドルたちも、この事件で、仲間を見つめ直し、あらためて、ここまでの道程を思い返せたのかもしれません。
「宇宙に行く日まで、あと少ししかないよ。」「間に合わなくなってしまう。」「じゃあさ、集まろう!ってなったら、すぐに、集まることにしよう!あと、集中!」「そうだね、時間は戻らないよ。だから、大事にしなくちゃいけないんだ。」「忘れないように、書いておいたらいいよ!」「先生、書いて!」と鼻息が荒くなってきました。私は、正面のホワイトボードに、「すぐにあつまる!しゅうちゅう!」と書きました。(この時点ですでに、降園時間が過ぎており、慌てて油性ペンで書いてしまいました。)
最後に、言い残したことがある人はいませんか?と伝えると、数名、手を挙げた人がいました。昨日、ふざけて失敗をしてしまった子と、今日、失敗したと感じていた子が、ひとりひとり謝りました。みんなに許してもらい、来週からまた、ゆり組らしく過ごそうと確認し合い、一週間が終わりました。
 降園時間を大幅に越えてしまい、ご心配をおかけしまして申し訳ありませんでした。保護者の皆様には、子どもたちの学びの時として理解し、温かく見守ってくださったことを後から知り、大変うれしく思いました。大切に育てたいところを、ご理解いただけたのだと思ったからです。

 失敗やうまくいかない経験、問題に何度もぶつかりながら、その度に、自分の心と向き合ったり、その時の遊びの仲間と考え合い、みんなで話し合いをし、過ごしています。自分が直接関わっていたことではないけれど、仲間のひとりとして、自分事として受け止められ、みんなの中の自分を感じられるチャンスと考えているからです。

ゆり組の子どもたちは、今、いろいろな人に支えられ、子どもたちなりに培ってきた自分の知識や愛を、どのように使うことがよいのか、どのようにしたら、自分だけではなく、周りの人も幸せになり、そして、愛される自分になれるのだろうかと、深く考えながら過ごしています。自分の力を最大限に生かし、仲間と共に乗り越え、仲間の中の自分を感じながら、自分の存在意義を感じていけたらと願っています。

 アイドルの女の子たちは、夏祭りにライブをしようと計画し、踊りの練習や衣装作りをはりきっています。女の子たちのアイドルに触発されて、男の子たちのアイドルや、バンドチームもライブに向けて活動が始まりました。宇宙船秘密基地は、プロペラや宝箱を作り、お泊まり会の夜中に、宇宙に旅立つことを計画しています。ゆり組32名の秘密の計画です。操縦席作りや、宝箱に入れる宝石作りなど、まだまだ準備があります。残りの1学期も最後の最後まで、遊び尽くしたいと思います。

 考え学びながら、ひとつひとつを、乗り越えていく力、仲間を支え合い、励まし合いながら、実現させていく力は、子どもたちが、これからの人生を、力強く生き抜くために必要なものです。問題をごまかさず、正面からとらえさせ、厳しい場面をあえて、経験させたいと思っています。ご理解ご協力を、よろしくお願い致します。