✿つぼみ便り✿

 ある朝のことです。一人の子が、「ママといたい」と泣いて来ました。学級では、歌をうたおうとしていたところでした。その子の泣き声が、学級にも聞こえてきました。みんな、すぐに「〇〇ちゃんだ!」「悲しい声がする!」と、気がつきました。私が玄関に行くと、みんなも一緒に来ました。泣いている友だちに、私が声をかけようとしましたが、子どもたちの方が先に、その友だちを取り囲みました。「大丈夫だよ」 「泣かなくていいよ」 「ママは迎えにくるよ」 「守ってあげるよ」 「一緒に行こう」 たくさんの愛の言葉がとびかいました。言葉にしなくとも、ギュッと抱きしめる子もいました。遠くから、心配そうに見守る子もいました。両肩をつかんで、やさしく見つめる子もいました。上靴をはかせてあげようとする子、カバンをかけてあげる子もいます。私は玄関でただ、子どもたち同士のやりとりを見ていました。すると、「こんな時は、あの歌をうたおうよ!」と提案する子がいました。今、私たちがうたっている、大好きなうたです。

『大丈夫 大丈夫 みんながいれば 助け合い 励ましあい 支え合い 喜び合い どんなことも越えられる みんながいれば♪』大合唱でした。

その子の悲しい気持ちは、いつの間にかなくなっていました。そして、笑顔が戻り、いたずらぽんちきの1日が始まっていったのです。

 この朝の出来事に、私は深く感動しました。愛の言葉を言う子も、その子のために何かしようとする子も、4月は「ママ~」と泣いていた子たちです。自分の世界にいた子たち、ゆりさんに助けてもらっていた子たちです。
 この1学期に、たくさんのいたずらをしてきました。「楽しいね!」の空気を何度もみんなで味わってきました。どろんこや絵の具まみれになって、言葉にならない楽しい気持ちを誰かに伝えたくて、同じ気持ちで遊んでいた友だちと、顔を見合わせて大笑いしたこと、その時の気持ちがうれしくて、何度も繰り返して、友だちという存在に気づきました。
始めてのお弁当の日、みんなで食べるおいしさ、楽しさを知りました。みんなで祈っていただきますをすることで、今日もいっぱい遊んだ幸せを噛みしめ、作ってくれたお母さんに「ありがとう」の感謝の気持ちを感じ合いました。
うたうことが大好きで、たくさんみんなでうたいました。リズムにのって体を動かしたり、静かに熱唱したり、跳びはねて音楽を感じたり、自分の好きな思いでうたうことが最高に楽しいことを知りました。心を解放して、表現する喜びを知ったと共に、みんなで一緒にうたうから楽しいことも、何度も確かめ合いました。
砂場でのプリン屋さんでは、友だちとやりとりする楽しさを味わいました。もちろん、うまくいかないこともあるけれど、それもひっくるめて、友だちっていいな、と思える時でした。
ラディッシュを植えて育てて食べることで、命を感じることを、たくさん向き合いました。
また、今までは、ゆりさんにおいしいものを分けてもらっていましたが、分けてもらう経験を経て、クラスの仲間と分け合って食べる心が育ち、そのことが心地よいことを知りました。
友だちという存在が見えてきて、相手にも気持ちがあることに気づいてきました。何かしてあげたいな、という気持ちが芽生え、自分には何ができるだろうかと考えたときに、お兄さん、お姉さんにしてもらったことを思い出すのです。
 日々そのような経験を積み重ね、今、つぼみなりの仲間意識が育ってきています。優しくしてもらったことが心に残り、今、生かされています。自分が経験したことを、その子なりに吸収し、自分で考えて行動に移せるようになってきたのです。子どもの力は無限大です。日々の、子どもたちの小さな経験の積み重ねが、いかに大切なことか、改めて感じさせられたのでした。
 そして、泣いてきた子にとっては、たくさんの仲間の愛を実感でき、安心と、うれしさを味わえたことでしょう。きっと、『泣く』を繰り返しながらも、いつの日か、今度は友だちに愛を分けていくことでしょう。この子はその日の帰り、「明日も泣いてくるよ」と言って帰りました。そして、翌日には、元気にママと別れていました。子どもの心の深さを思いしらされます。子どもの深い思いに出会い、私は、幸せな一学期だったと思いおこすのでした。
一学期、保護者の皆様にお支え頂き、ご理解頂き、お礼申し上げます。また二学期も、様々な経験をしながら育っていく子どもたちを、心を尽くしながら支えていきたいと思っています。どうぞ、よろしくお願い致します。