急がず、しかし休まず  (園便りNO.10)

 2学期は、ずっと自分の心を見つめ、友だちのために自分にできることを考える時間を大切にしてきました。そして、9月下旬頃には、子どもたちの生活の中から、社会事象や自然現象から、「幸せ」について考え、その思いを響かせ合うようになってきました。その集大成が、あの発表会となりました。「自由とは」「音楽を楽しみ合う」「生まれたことを祝ってもらう」「分け合う」など、いろいろな視点がテーマになりました。ナレーションでは、「私たちは幸せの中で生きているよ」「喜びを見つけられる心が大切なんだよ」「おひさまも夕焼けもみんな同じにやってくるよ」「幸せはいつも自分の心が決めるんだよ」と、自分の言葉で語ってくれました。子どもたちが、実体験を通して感じたり、礼拝の時間に自分の心を見つめたりして分かったことが発表に繋がり、劇の言葉になっていきました。教師は、子どもたちの気づきに、「はっ」とさせらたことでした。
その後、生活発表会からアドベントへと、活動が移っていきました。自分の心に、光はともっているのかと自問し、真っ暗闇では、何にも見ることができないことに気がついたのです。小さい光でも、大切であることを知ったのです。
私は、このような生活の中で、当然、自分の行いに苦しみをもつ子が現れることを知っています。自分の心を見つめ、葛藤が生まれるからです。「昨日、お母さんに嘘を言ちゃったんだ」とか、「お母さんは僕のことを怒った。本当は僕が悪いんだ・・・」と、何気ない会話の中で話してくることがあります。私は、何があったのかは問い正さずに、「そうだったんだ。光の心で見てごらん」と返します。友だちを仲間はずれにしたり、自分の都合で仲良くしたり、しなかったりすることを、学級みんなで考え、正しい在り方を話し合うこともありました。それを受けて、隅っこで、友だちから言われた言葉をかみ締め、自分と向き合う子もありました。
子どもは、ただ明るく、元気で、泣いて、笑って、そして可愛い、それだけで生きているのではないのです。幼稚園生活の経験から、「幸せってこういうこと」と分かったとしても、すぐに忘れたり、わざと破ったり、知らないフリをしたり、うっかり失敗したりしては、その後で「やっぱりそういうことなんだ」と気づき、更に同じ事を繰り返しながら「こういうことなんだ」ということを深く、深く分かっていくものなのです。その事こそが大事で、そのようにして、子どもなりの、その子なりの責任をもって生きる力を身につけていくのです。
失ってみて、初めて「本当の幸せ」に気がつくことがあります。私は、よくケガをしますが、小指を骨折して、「小指でよかったですね」と看護師さんに慰められたものの、「こんなに小指は働いててくれたのか」と、骨折前の小指に改めて感謝したことでした。皆さんも、失恋や病気、大切な人が亡くなるなど、様々な経験をお持ちでしょう。困難や苦境に立ってみて、初めて気が付くことがあるのではないでしょうか。
子どもは、まだ幼稚園と言う小さな世界で生きていますが、その中でいろいろな経験をし、葛藤を繰り返す中で、本当に大事なもの、掛け替えのないもの、自分の在りようを見つけていくことが大事だと思うのです。心の根っこがいちばん育っていく時だからです。
私が中学生の頃、「ポエム」という言葉がはやり、友だちとこぞって短い詩をノートに書き貯めました。「チッチとサリー」の時代です(分かるかな?)。その時、「石川啄木」や「ゲーテ」の本を、恰好つけて読んだふりをしたことを覚えています。でも、今になって、やっとわかったゲーテの詩があります。

~星のように 急がず
 しかし 休まず
 人はみな
 己(おの)が負い目のまわりを巡れ~

誰もがすっきり爽やかに生きてはいません。人には言えない事情もあるでしょう。境遇もあることでしょう。子どもも例外ではありません。恒星のように急がず、ゆっくり長い時間をかけいくうちに、葛藤が解け、乗り越えられるようになるのではないでしょうか。
だから、幼稚園の時間は、細切れの生活ではなく、年に一度のしし座流星群の流れ星のようにではなく、ゆっくり巡る恒星のように、たっぷりと時間をかけて、子どもの心の根っこを育てる時間だと信じています。

アドベントの期間、先に述べたように、自分の心に愛があるか、愛の光が灯っているか、星を目当てに、光を大事にして、一人の人として生くべく、子どもたちだけでなく、教師たちを含めて大人も、自分の心に問いかけたいものです。そして、苦境や困難の中に幸福の芽があることを信じたいものです。

2学期も、絶大なご協力に感謝します。楽しい冬休みをお過ごしください。

手作りのクリスマスプレゼントのご協力をありがとうございました。すばらしい作品の数々に愛の心を感じました。ありがとうございました。

*1月の予定*
21日 始業式
23日 餅つき 視覚支援学校交流
24日 新入園児面接日(通常保育)
27日 避難訓練(火災)
   なにぬねのの日
28日 視覚支援学校交流
29日 なにぬねのの日
30日 誕生会