みんな仲良く一緒に(NO.1)

 雪まつり頃から、コロナウイルスが日本に広がってきたかと思ったら、急速に世界中に広がってしまいました。この事で、私たちの幼稚園も例外ではなく、長い臨時休園を余儀なくされました。初めての出来事に怯えました。お仕事をお持ちのお母さん、計画のあったお母さんは戸惑いました。子育てと向き合い、家事に専念していたお母さんは、エネルギーの余った子どもたちの前で、煮詰まりそうでした。私たち教師は、できることを考えました。誰一人、孤独にならないように、不安が増さないようにと願いました。更に「誰一人(教師も)、ウイルスに侵されてはならない」という思いで、できるだけタイムリーにコロナ情報や家での遊び方、マスクの作り方、アイディアなどをお伝えしてきました。時折「消毒液を分けてください」と尋ねてくださる保護者の笑顔にホッとしたことでした。私たちの園から関東方面へ引っ越ししていった家族がいましたから、そのことも心配でした。やがて、保護者から私たち教師を励ましてくださる声が届きました。そして、そのような中、園を巣立つ卒園児の思いを汲み取るように、在園児の保護者からやさしい温かなメッセージも届けられました。お互いに弱い私たちは、堅くつながっていました。
世界中が恐怖の渦の中にいるのに、こひつじ幼稚園の園庭には、クロッカスが咲き乱れ、雪山から雪解け水が小川のように園庭に向かってキラキラと流れ、卒園式のために生けた桜の枝からは、柔らかな黄緑色の葉っぱが生まれていました。こんな厳しい日々でも、それでも、春はやってくるのだと思いました。
しかし、このようなことが毎年あってはなりません。異例なことなのです。もう少しすると、よい薬が発明されることでしょう。これまで頑張ってきたのですから、気を引き締め、あと少し辛抱していきましょう。
そのような中、新しい年度が始まりました。ゆり組の子どもたちは、わくわくした表情をしていました。たんぽぽ組の子どもたちは、少し不安そうな気持ちと同時に、お友だちに会えたことの喜びも表情から伝わってきました。担任が発表されました。新しい先生も紹介されました。この仲間に、小さな新しいお友だちが加わります。入園式には参加できない在園児ですが、つぼみ組の新しい友だちのためにお迎えの作戦を立てていました。小さな女の子が言いました、「世界中のコロナウイルスが、跳んで行っちゃうようにって、お祈りしていたの」と。子どもたちも、平和で仲良く過ごせることを願っていました。
冬を耐え、美しく咲いたクロッカスのように、私たちも、この厳しい情勢を静かにじっと耐え、希望をもって進みましょう。ふと、谷川俊太郎の詩を思い出しました。「目の前にいなくても、その人がいると思うだけで幸せになれる、そんな『その人』がいるのは幸せだ。」
新たな2020年度を、みんなで仲良く一緒に、美しく、楽しく、優しく過ごしていきましょう。進級、入園、おめでとうございます。