あと一息頑張って(NO.2)

 長い長い危険な春休みが続いています。鈴木知事の記者会見の度、社会情勢がどのようになるのか、教育の世界がどの様な道をたどるのかと注目していました。臨時休園が延びる度に、子どもたちも保護者の方もどんなにがっかりしているだろうと、そればかり思っていました。その度に、教育委員会や学事課から幼稚園に送られてくる大量のメールに疲れてしまいました。それでも少し、明るい兆しが見えてきましたね。
 この休みの間に、卒園児から手紙やメールが届きました。「幼稚園のあの時、ありえない程遊んだ。全部が全力だった〝タバゴン″みたいな先生目指し、この春に教師になった。お互い頑張ろう。」や「先生、サクラマスが手に入ったんだ。幼稚園で作ったチャンチャン焼きの作り方を教えて」と、中学生の男児。「先生、こんな時は遊ばないで静かにしているんだよ。ウイルスの研究をしちゃあだめだよ」と30歳を過ぎた教え子など、いろいろです。この子たちは、幼児期にたっぷりと心ゆくまで遊んだ子たちです。だから、こんなピンチでも、希望をもって、楽しかったことを思い出して、私まで励ましてくれて、生きているのです。すごいことです。折れそうな私の気持ちが、その度にビシッと、バシッと戻るようでした。
 反面、こんなことも思いました。今のこひつじ幼稚園の子どもたちは、幼稚園の一番大事なこの時期の経験を失っているのです。時間は戻らないのです。子どもたちに、ただただ有意義な経験をさせたい。そう考えると、また苦しくなるのでした。
そんな折、卒園した保護者からメールをいただきました。男の子二人のお母さんです。「この状況下、毎日次々と遊びを考えて飽きもせず、なんだか充実。さすが!こひつじ幼稚園の子です。子どもとゆっくり過ごす時間は、幼稚園の頃のようです。こひつじ幼稚園の子どもたちはこういう時でも、興味や楽しみを自分から見つけていくのが本当に上手です。生きる力がたくましく、しなやかで。こひつじ幼稚園でたっぷり蒔いてもらったたくさんの種をありがとうございます」と。この二人の男の子が幼稚園でどのような経験をし、どのように育っていったのか、お母さんがどんなに悩み、もがきながら過ごしたかを昨日のことのように思い出せました。上の子は、一度、「幼稚園をやめる」と言ったことがありました。上記に紹介した、この春教師になった教え子も、たくさんの壁にぶつかり、もがきました。サクラマスの子も、苦しい経験をしながら、母と一緒に、何度も涙の中で光を見つけながら過ごしました。私に、静かにしているんだよと言ってくれた教え子は、共にいたずら研究に没頭した子どもでした。「たのしい」「おいしい」「苦しい」「悲しい」「大失敗」をたっぷり生活の中に散りばめられる時間が子どもの「遊び」です。いつまでも心の奥に残る「あったかい思い」です。
 先日、教師たちは勉強会をしました。子どもたちがいない今、自分たちに教師としての力を蓄えて子どもに向かおうと考えたからです。教師たちは、真剣に学び合っていました。また、一年を見通して、今できることを考え、仕事を洗い出し、分担する姿は頼もしいです。教師たちは、子どもたちが充実した遊びを展開していかれるよう、待っています。その時は、もうすぐです。あと一息、頑張りましょう。
そして、この事態の経験から、お互いに生きること、生かし合うことを考え合い、学ばせていきたいと思っています。
年長さんから葉書が届きました。「こひつじようちえんは、たのしいところだとおもいます」と書いてありました。