巣立つまでに(NO.8)

on 11月 24日, 2020

 私の家は南斜面側の藻岩山にあります。昔は、リスやアカゲラ、カエルも来ていましたが、どんどん家が建ち、今ではめったに来なくなりました。それでも、変わらず毎日遊びに来るのは、餌をついばむ100羽ほどのスズメと、仲良し夫婦の山鳩、季節ごとの山鳥やカラスと野良猫と、隣の家の黒猫です。
それぞれの生き物たちと私との物語がありますが、その中でも長い付き合いのカラスのことを今回は書き留めることにします。
ふと、ある日、庭から家を見ると、家の後ろの杉の木が見えました。私が子どもの頃にいたずらで植えた杉の木が、立派な一本杉に育っていました。こいのぼりの支柱の倍以上の高さです。傾斜のある場所に生えています。忙しさにかまけ、ここ数年は、この木のことを忘れ、油断していました。地震が来たら大変だと思い、業者に伐採を依頼したのが6月のことでした。ところが、杉の木の先っぽにカラスの巣があって、「親から攻撃されたため、子どもが巣立ってから伐採することにした」という連絡が入りました。私の家には、代々カラスの家族が入れ替わり食事をしに来ます。裏の杉の木が家だったなんて驚きでした。今年はちょうど2羽の子どもを連れてきました。子どもの口は赤く、飛び方も下手くそなので、すぐに分かります。お母さんと変わらない体の大きさなのに、大きな口を開けて餌をもらっています。家のカラスは、母と私の顔が分かります。リビングでくつろいでいると、ベランダのフェンスに止まって自分に注目を集めるように鳴きます。食べ物をねだっているのです。知らんぷりして、ダイニングでご飯を食べようとすると、ダイニング側の電線に止まって、何を食べようとしているのか窓から覗くのです。落ち着かないので、カラスにご飯をあげることになります。主人にはしません。主人はご飯をくれないことを知っているからです。
 代々のカラスを、メルちゃんと呼んでいます。メルちゃんは、私の手からごちそうをもらいます。体重当たりの脳の重さは、人間で1.8%なのに対し、カラスは1.4%と、鳥類では断トツです。カラスにできて、犬や猫にできないことが山ほどあります。顔の認識もできます。マスクをしても、体形や目などから、認識できます。これまで、様々な実験をしました。メルちゃんは、まつげが長く、とても美人です。子どもがそろそろ巣立つ頃、メルちゃんに事件が起こりました。足がブランと折れ曲がり、長いまつ毛がショボショボしているのでした。何があったのか分かりませんが、何もしてあげられません。せめて、栄養をつけてあげようと思い、豚肉の切り落としを毎日あげてみました。それでも、メルちゃんお母さんは、先ず子どもの口に入れ、それから自分が食べるのです。毎回そうでした。巣立つ頃の子どもたちは、自分でついばめるようになっていました。そんな時も、メルちゃんお母さんは、電信柱から、子どもたちが先にもらって食べるのを見てから、ゆっくり降りてきて、自分の食事をするのでした。愛情の表現は、人も動物も様々ですが、親が怪我をしたとしても、痛みがあろうとも(痛さは確認できませんでした)、片足の不便さがあっても、子に注ぐ愛情は深いものだと感じました。メルちゃんの足が、回復した9月の終わり頃、業者さんから電話がありました。「カラスが、子離れしたと思うので、木を伐りに伺います」と。幼稚園の白樺より背が高く、太い杉の木は、何段階にも切り分けられ、坂を転がされ、トラックに積み込まれました。カラスの巣は、大きくてフカフカで、いいお家でした。親が子どものために大事に作った巣だったことでしょう。これまで我が家に訪れていたカラスは代々、使用してきたのかもしれません。これで倒木の心配がなくなったという安心と共に、メルちゃんは、これからどうするのだろうと思ったり、幼稚園だったら、その木もいろいろな遊びに使えるのにと、少しもったいないなと思ったことでした。杉の木の切りカブの横に、小さな犬のぬいぐるみが落ちていました。10年以上も前に亡くなった犬の「もん次郎」が、くわえて遊んでいたぬいぐるみでした。メルちゃんが、巣にとっておいてくれたのでしょう。素敵なプレゼントでした。こんなことってあるんだなと、嬉しくなりました。子どもたちは、親離れをしていきました。メルちゃんは子育てを終え、一羽でやってきました。ご苦労さんの気持ちを込めて、ジンギスカンの脂をあげました。そのすぐ後から、二羽のカラスがやってきました。子どもたちでした。メルちゃんは、知らんぷりをして、飛んでいきました。子どもたちは、これから厳しい世の中を生きていくことでしょう。本当の子離れなんだなと思いました。私にとっては、何も変わりませんが。
 私たちのこれからの時代も、あらゆることが厳しい時代であることは間違いありません。その時代を強くたくましく、力強く、しなやかに生き切られる人間に育てなければなりません。親の責任、大人の責任は重大です。子育て時代は、子どもを真ん中において、我が子にとって一番の選択をしていく必要があります。少しばかり大きくなったからと言って気を抜いてはいけません。メルちゃんは、親と同じくらいに大きくなった子どもの口に餌を入れていました。怪我をした時でさえもです。時はどんどん過ぎていきます。巣立ちは、あっという間です。子どもが今、心を豊かに育つために、愛情をたっぷり注いでいきましょう。

*12月の予定*
1日 アドベント週・誕生会
11日 わくわく広場、わくわく組懇談会
16日 クリスマス会・ゆり組懇談会
17日 つぼみ組、たんぽぽ組懇談会
18日 終業式
21日 冬休み(1月19日まで)