あふれる感謝を(NO.8)

あっという間に秋が来たと思ったら、早くも雪のニュースが聞こえ、秋が足早に去ろうとしています。園庭のりんごは、すっかりみんなで食べて無くなり、今は、真っ赤なダリヤと真っ白い秋明菊がワサワサと咲き誇り、胡桃の木からは、立派な胡桃が熟して落ちてきます。変わりやすいお天気の中、子どもたちは「今だ!」と、外へ飛び出していきます。「あー、少し寒くなったね」「雪虫だ!」「畑はもう大根しかない」など、友だち同士の会話が弾みます。そのような会話を耳にしながら、秋を楽しませながら子どもたちの心に「命のこと」「生きているということ」「自分の本当の心は」ということを考えさせたいと思うのです。
さて、この秋は「秋の味覚」を、たくさん楽しみました。春に植えた野菜の苗や種は大きく育ち、運動遊びで熱くなった身体を塩もみしたキュウリが、何度もほっとさせてくれました。園庭のナスやピーマン、ズッキーニなどは、炒め物になりました。香ばしい醤油の香りに行列ができるほどの大繁盛でした。野菜嫌いの子も、勢いで友達と一緒に並んで食べてみるという大変革を起こしました。玄関のブドウは、少しずつ変化していくのを見ることで、季節の移ろいを感じつつ、食べ頃をみんなで決めました。青ジソを醤油に漬けて、シソおにぎりやシソのふりかけができました。赤ジソはジュースになりました。大豆は、人参、ごぼう、椎茸、こんにゃくが加わり、五目豆に変身して、お母さんのお弁当と一緒にお腹を満たしてくれました。みたらし醤油でお月見団子屋さんができ、秋の始まりを感じ合い、保護者の方から余市リンゴを箱でいただき、リンゴグラッセのお店屋さんが大盛況、紙で作ったお金で買い物をしてから食べる楽しい活動となりました。
今年の感謝祭では、鮭汁をみんなで食べました。目の前の大きなシャケ3匹を、触って、持って、口を開いて観察して、生態の話をしながら子どもたちの目の前で解体をして、心臓や強い骨を確認しました。それを見つめる子どもたちの目は真剣そのもので、「私たちは本当にこうして命をいただいて生きている」ことを実感し、その思いを分かち合いました。
もっとシャケのことを知りたくなった年長児は、バスに乗ってサケ科学館に出かけていきました。分かったこと、びっくりしたこと、楽しかったことなど、たくさんの報告を聞きました。とても印象に残ったのでしょうか、卵を産むためにボロボロになって、川に戻ってくること、特にボロボロの様子を何度も報告する子がいました。
この秋に育った美味しい野菜たちを鮭汁でいただき、そのおいしさに野菜も100%の力で生きていることを感じ合うことができました。私たちの周りには「いのち」がたくさんあること、自分も大切ないのちを持つ一人であること。いのちが与えられていることにあふれるばかり感謝することの意味を知っていきました。
その後、教師たちは自分のいのちを100%活かせているのか、自分をどのように表現し、活かすのかを子どもたちに問い続けています。
幼児期は、幼稚園という小社会で仲間の中の自分を感じながら、自分らしい表現、自分の得意、友達がいることの喜び、助け合うこと、友達に感謝されたり感謝したりする気持ち、友だちと協力する楽しさ、間違ってもいいこと、心地よい関係などを学んでいきます。学ぶほどに、日常お母さんにしている甘えている表現ではだめなのだということを知っていきます。自分の意思を相手に伝える術を学んでいきます。
たんぽぽ組のJ君とY君は喧嘩をしました。二人は、「友達をやめた」と言いました。学級では、離れて座っていました。次の日、Y君はJ君に大怪我をさせてしまったと目が覚めました。実際には乱暴はしたが、けがはしていません。J君は、Y君が登園してきたかを気にかけて、玄関を行ったり来たりしていました。それでも二人は、友だちをやめたと言い切りました。
そこで私は聞きました。「Y君、J君が本当に困ったら助けてくれる?」「うん、助けてあげるよ」「J君、Y君が困っていたら、助けてくれる?」「うん、助けてあげる」二人は躊躇なく当然だと言わんばかりに即答しました。「心は愛で繋がっているね」というと「うん」と頷きました。
喧嘩はだめではないのです。喧嘩ができる相手がいる。そして、怒るということや自分の思いを吐露しながら、自分の心を整理しつつ、相手の思いをうかがい知り、自分の在りようを学んでいくのです。その先に、友だちがいる幸せに気づいていくことでしょう。
ちょうど今、どこの組にも自分の表出の仕方が、仲間から認められず、うまくいかない友だち関係を感じている子どもたちがいます。わがままではだめなのだと頭では分かってきているのに、心と体が合いません。私たち教師は、静かに見守りながら、なんとか乗り超えられるように支えていきます。学びの時です。じっくり考える時が与えられているのだと捉えます。
シャケは、卵(イクラ)に自分の持っている全栄養を注ぎ込むのだと聞きました。だから、イクラ は シャケの身の栄養を得て赤くなり、卵を産んで死んだシャケの身は白くなっているのだそうです。私たち教師も 子どもたちが、様々な心の経験が 得られるよう、シャケのように全力で子どもたちに向かいます。この秋、幼児らしい豊かな心が実るようにと願います。 保護者の方から、まだ熟していない柿をたくさんいただきました。玄関ホールに食べ頃をねらっている子どもがいます。この柿が熟す頃の子どもたちの心の成長が楽しみです。

*11月の予定*
1日 2023年度入園受付
10日 身体測定
17日 生活発表会
22日 年長児伏見小学校交流 なにぬねのの日
24日 アドベント第一週 避難訓練(不審者)
29日 園長先生お話会
30日 誕生会 アドベント第二週