くたびれるほどに遊ぶ(NO.2)

幼稚園の玄関でお母さんに「バイバイ」して、不安そうにしていた子どもも、いつもの先生に、いつもの学級の様子に、記憶を巻き直して安心を取り戻し、夢中になって「春」を楽しむ姿が見られます。「よく遊んでいるなぁ」と感心させられます。お母さんたちが、登園の時のちょっとした立ち話で、「ご飯を食べながら寝てしまった」とか、「お風呂で寝てしまった」とか、「降園時に歩きながら寝てしまいました」などと、笑いながら教えてくださるのですが、私は朝から、幸せな気分でいっぱいになります。子どもは遊ぶことが仕事です。遊ぶために、幼稚園に入園したのです。ですから、お母さんにはくたびれるほどに、自分の心も身体も使って遊べた我が子を喜んで欲しいと思います。子どもは、遊びを通して自分を知り、助けてもらったり助けてあげたり、怒ったり笑い合ったりしながら、人を信じることを知り、愛を知り、生きるということを学び、掛け替えのない自分を生かしていく力を身につけていきます。どの子も、必ずです。私たち教師はそのための助っ人として、子ども一人ひとりの心持ちを図りながら、様々な遊びを計画し、投げかけていきます。

幼稚園には、いろいろな木があります。イチイの木(北海道ではオンコと言う)のチクチクした緑の葉っぱの間から、木に登っている子の高らかな歌声が聴こえてきました。顔は見えません。その下で、斜めの板に乗った女の子4人で、口伴奏を添えての合唱が始まりました。リズムを刻むと同時に、乗っている板がしなっています。それがまた心地良さげです。子どもたちの大好きな歌で、昨年度、レコーディングもした曲です。

「♪〜〜〜〜〜超えてゆけ!(木に登っている子) 超えてゆけ!(板に乗った女の子) 超えてゆけ!(木に登っている子) 超えてゆけ!(板に乗った女の子) 新しい扉開けた未来を 共に生きよう!(みんなで絶叫)」 青い空に、一丁先まで響き渡る年中組の仲間の声、ピカピカの笑顔に、私は、「そうだそうだ、共に生きようね。どんなことがあっても、この幸せな時間を守ろう」と思ったことでした。

歌と言えば、もう一つ素敵な場面を見つけました。つぼみ組の子どもたが、園庭に咲いている黄色い花に注目していました。男の子と女の子とまりこ先生が、蕾の前にしゃがみ込み、「まだかな」「もうすぐ咲くね」「歌ってあげるか」など、会話を交わしているのが聞こえてきました。しばらくすると、男の子が、首に下げているシェイカーでリズムをとりながら、「さいたー さいたー チューリップのはなが〜」とチューリップの蕾に歌ってあげていました。きっと、チューリップさんは、喜んで聞いてくれたことでしょう。対象が人間ではなくても、「相手のために」「相手の思いになってみる」ということが、「相手の思いを想像してみる」「思いやりの心をもつ」ということの始まりです。近くで、チューリップを見ていた子が、「先生、あの花、ママに持って帰りたい」と言いました。私は、「花壇の花はとらないから、同じ黄色のタンポポなら、どう?」と、生まれたばかりの小さなタンポポを差し出しました。大切にジャンパーのポケットに入れ、嬉しそうにしていました。きっと、自分のママの喜ぶ顔を想像していたに違いありません。

しばらくすると、クラシック音楽が聞こえてきました。モーツアルトの「オーボエ四重奏」から、「アダージョハ長調」と続きます。重厚な音楽で、「風の妖精ごっこ」を楽しむゆり組の女の子たちがいました。身につけたヒラヒラのテープが、風のままに任せ揺れてます。音楽に合わせ激情的に、思い思いに踊っている風の妖精たちでした。園庭中を所狭しと動き回る姿は、風の妖精にしか見えません。「先生、仲間を集めたわけではないの。自分で決めて、風の妖精の仲間に入ったの。少しずつ、風の妖精が増えてきたの。私嬉しいの」と言って、妖精たちは私を通り過ぎていきました。

こひつじ幼稚園では、遊びの中に音楽が自然に加わり、一体となって子どもの心を豊かにしてくれています。家で、リクエストしてみてください。幼稚園で歌っている歌をうたってくれるかもしれません。

札幌も、コロナウィルスの変異株が広がり、再び厳しい状況になってきています。私たち教師も、更に緊張感を感じていますが、子どもの歌は、心を癒し、励ましてくれる良い薬です。

*5月の予定*

11日 わくわく広場開始

18日 ゆり組母の日礼拝・後援会総会

19日 たんぽぽ組母の日礼拝・後援会総会

20日 つぼみ組母の日礼拝・後援会総会

27日 つぼみ組誕生会

28日たんぽぽ組・ゆり組誕生会