葦のようにしなやかに(NO.9)

 北海道は新型コロナ感染が1日の感染者が1万人を突破し、第8波に入ったという認識を示しました。こひつじ幼稚園も家族の感染の報告を受け、緊張の日々を過ごしております。今はご家庭でも、寒くなって閉めがちな窓を開け、換気をしていきましょう。生活発表会への活動が盛り上がる中、休園しなくてはならなくなり、ご迷惑をおかけしましたが、無事、2学期を終えられるようにと、祈りつつ過ごしています。再開したこひつじ幼稚園は、また元気な子どもたちの声が響き、発表会という目的をもった子どもたちに活気を感じ、ほっとする私がいます。そのような中、「サカエセンセ〜!」と、泣き叫ぶ声が聞こえました。2階の職員室で仕事をしていましたから、びっくりしました。どうしたのかと思いましたら、彩花先生が小指を押さえて、目の前に現れました。「火傷したのー」と。ベロンと皮のむけた細く長い指をすぐに冷やして処置をしましたが、指先の火傷がどれほど痛いか私にもよく理解できますが、体をクネらせ、泣きながら「痛いー」と叫び、大いに痛がっている様は、不謹慎と思いつつ、笑いさえ浮かんでしまいました。その後、学級では泣いている彩花先生の背中をさする子、心配そうに見守っている子、「治るよ」と励ましている子、私のように笑いを堪えて見ている子など様々でした。春にも見た光景です。何人もの子どもたちが口々に、彩花先生が火傷で泣いたことに笑いを堪えながら報告してくれました。傷が落ち着くまでの3日間は、痛みと戦う彩花先生がいました。それから数日して、百華先生が指を水で冷やしていました。痛そうな姿に子どもたちが大騒ぎです。子どもたちの注目は、百華先生の顔です。痛がっているが、泣いていない百華先生に、「あのね、彩花先生は泣いていたんだよ」と言い、百華先生は「泣かないもん」と答えています。
それから数日後、研究所で作り物をしていた子どもが、「あのね、火傷して、彩花先生は泣いたの。百華先生は泣かなかったの。栄先生はどっち?」と。「あなたはどっち?」と聞くと、「私は強いけど、泣くかもしれない。。。彩花先生も本当は強いよね。でも百華先生も泣きたかったかな。栄先生は痛くないかも」と楽しい会話が広がりました。
彩花先生と百華先生の放課後の会話も面白かったです。「火傷どうなった?」「もう治った。どこを火傷したかわからないくらい。だって、彩花先生みたいに皮むかなかったもん」「そうかー、私まだ皮弱いー」と。私は、子どもたちの様々な顔を思い浮かべ、二人の回復に向かっている指の会話に笑いを堪えながら聞いていました。

この出来事で、50年も前に読んだイソップ童話の中に「樫の木と葦」というお話を思い出しました。樫の木は、漢字の通り堅い木です。一方、葦は湿った土や水辺に生息するススキの穂のような弱い植物です。簾の素材です。
お話は簡単にはこうです。

樫の木が葦にお話ししました。「あなたには、穂先がふわふわで、少しの風でゆらゆらで、小鳥も止まることができないね。だけど私の梢は強烈な嵐の力も北風も止められる。私にとっては、台風はなんてことないですよ」すると葦が小さい声で言いました。「ご心配なく。私は、たわみますが、折れません」すると、地の果てから大竜巻が起こり、猛烈に吹き付けました。樫の木はもちこたえ、葦は横にしなりました。しかし、とうとう、残念ながら強い樫の木の根っこが抜けて倒れてしまいました。しばらくすると葦は、また真っ直ぐ空を見ました。

私たちは決して強い人間ではなく、完璧な教師でもなく、それでも子どもの前に立たせていただいています。悲しい心や、嵐のような心、迷いの心もあります。でも、葦の植物のように状況を受け入れながら、しなやかにたわみながらも折れずに前向きに過ごすのがいいと思いました。二人のように「楽しい」が加われば、最高です。
聖書の中にも「葦」のお話があります。「葦のように弱い私も、風に飛ばされそうな心の私も大切です」というのでした。
どの教師も、精一杯で過ごしています。そしてしなやかです。コロナ禍にあっても、眩しいほどです。どうぞ、子どもたちと、そのような私たち教師にも応援よろしくお願いします。

*12月の予定*
1日 アドベント第1週・避難訓練(不審者)
2日 アドベント第2週
6日 誕生会
7日 アドベント第3週
14日 クリスマス会
16日 2学期終業式
17日~1月19日 冬休み